グリーンホラー小説 サイカチ村カラカラの呪い 第2話 カラカラ様
まだ幼い頃の夢を見た。私の故郷は自然豊かな山里にあり、夜は遠くで生き物が鳴く声もよく聞こえ、それだけとても静かだった。しかし、冬の強い風が吹きつける日は、ガタついた木戸や雨戸が不規則なリズムで時折激しく騒いだ。そんな強い風が吹く山里の夜の夢だった。
明かりのついた部屋にはなつかしい母の姿があった。母は古いラジオを抱え、チューニングをしているが、なかなか合わないようだ。ラジオからはノイズと、それにまぎれてたまに人の声が聞こえた。時々母はボソッと、「風のせいで電波が悪い・・・」とつぶやくが、こりもせずにそれをもくもくと続けていた。私は小さな体を半分コタツにもぐり込ませてそれを見ていた。
雨戸が風を受けてバタバタッと音をたてた。
「もう遅いから、そろそろ寝ろ」
母は私に言った。私はまだ眠りたくはなかったのでいい加減な返事をしてごまかした。母はそれに気づいたらしく、ラジオを持ったまま私の横まで来て、私の顔をのぞき込んだ。何語かもわからない音楽がノイズの向こうにかすかに聞こえた。
「早く寝とけ。こんな木枯らしの吹く夜はな、カラカラ様が来るから。カラカラ様が来た時ちゃんと眠ってないと、カラカラ様の住む大きな木の上に連れてかれて、寒い風に当てて干されて、お前もカラカラにされちゃうんだから。聞こえるか?ほら、遠くでカラカラ音がするから」
私が耳を澄ますと確かに遠くで、風のひゅうひゅういう向こう側で、カラカラと鳴っているのが聞こえた。本当の子供のように私の心には恐怖心が芽生えた。しかしながら、その恐怖を決定的なものにしたのは、私の耳が母のラジオのノイズの中からもカラカラと鳴るその音を聞いたからだった。しかし母といえば厳しい目つきで私の顔をのぞきこんだままで、ラジオからそんな音がするのを不思議とも変だとも感じてる様子はなく、私はこんなに近くにいる母との間に、合わせ鏡のような、正しようのない違和感のある距離を感じた。風がまた強く吹き、雨戸をバタバタッ、ババンと叩き鳴らした。しかしそれだけで止まずに再び雨戸がまた激しく鳴った。もうそれは風の吹きつける音とは違う、意思を持って誰かが雨戸を激しく叩く音になっていた。
サイカチ
分類:マメ科サイカチ属
分布:本州、四国、九州
水辺に多く自生する落葉高木。5~6月、短枝の先に淡緑色の花を咲かせる。雌雄同株で、雄花、雌花、両性花がある。幹や枝には鋭いトゲがある。10~11月、果実(莢果)が濃紫色に熟する。この果実は木の上に多数ぶらさがり、木枯らしの頃、乾いたさやは、風に吹かれてカラカラ鳴って揺れる。
発芽
2月上旬、早くも発芽開始です。
下旬にもなるとあらかた出揃ったようで。
3月11日、みんなでバンザイです。
「カーラカラカラカラッ」
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