実生綺譚
私の体が親の体と似ていても違うように、兄弟とも違うように、タネから出てきた実生苗も、やはりそれぞれ違います。しかし盆栽を始めるまではそれほど意識もせず、同じものが生まれると思っていました。
去年杉並区の塚山公園で実っていたスモモのような実のタネ3つが発芽したものです。その木は葉っぱがいつも赤色でした。おそらく、ベニバスモモではないでしょうか。でもこの写真の3株の真ん中のものは葉っぱが緑色です。先祖帰りというやつですかね。同じ木のタネなのに。
去年は梅のタネも6個ほどまきました。そのうち3つが芽をだしました。
1号です。
これに比べて2号は、少し葉っぱが大きく、がっちりした印象です。
3号になると、発芽早々たくさんの枝を伸ばしています。
そのためか、葉っぱもこれが一番小さいです。
梅はタネまきから開花まで10年以上かかると言われています。さすがに気が遠くなるので、枝の出の良い3号だけは気ながにこのまま育てて、残りは台木にしようかと考えています。
開花に時間のかかる樹種でも最初から嫌がって育てなければそれまでですが、棚のすみっこで雑木としてでも育てていれば、忘れた頃に咲くでしょう。とりわけ愛してあげなくても邪魔にならないように小さく育てていれば実は無理でも花は見せてくれるでしょう。その時の喜びはどんなでしょうか。人それぞれ、年を重ねる充実感は違います。できればこれだけのことを自分はこの?年間でやった、と実感できる生活をしたいものです。何をやったか聞かれたときに、あれとこれとあれと・・・実生?とでも言ってやりましょう。
実生は開花まで時間がかかるのが多いですが、たのしみとして、新品種と言えるかはわかりませんが、普通のものとは違う個性派が生まれることがあります。柑橘類の品種なんかには、実生苗から偶然生まれたというエピソードをよく聞きます。
これは私が大好きな(食するという意味でです)‘秋映’というリンゴの実生苗ですが、同じ実のタネでも、右はよくあるリンゴの幹肌ですが、左は生まれた年から荒れています。しかも、幹がものすごく柔らかいので、針金がなかなか効きません。
盆栽的には幹肌が荒れていた方が、古木感がでるのでいいのですが、この先どうなるかは、あとのおタネしみです。
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