SSブログ

【質問】コナラの軸切りについて 前編

 会の方からメールにて以下のような質問を受けました。
実は冬にまいたコナラが芽を出してきて、軸切りにトライしたいと考えてます。先日、種から出ている軸をエイヤと根元から切って、ルートンを付けて差しておいたのですが、1週間で萎れてしまいました。(>_<)
 
まだ早かった?切る場所が違う?
 
あと、4本あるので、色々と試してみようかと思いますが、アドバイス頂けると幸いです。


 とても興味深い質問だと思ったので、こちらで改めてまとめさせていただきました。

 

 最初にですが、コナラにわざわざ軸切り挿し芽を試みる目的は、極小さなコナラを仕立てるためで、そのためになるべく低い位置で節を持ち、結果、そこで芽吹きや分枝が欲しいということだと思います。しかし、ドングリ系の樹は挿し木などの発根が上手くいきにくいところがあります。これには発根を阻害する、渋の成分であるタンニンが関わっているそうです。まずこの性質が前提になります。

 

 次に、発根にはそれなりの養分が必要だということです。発根しにくい樹種を挿したり取り木したりする時は、前の年からよく日に当て肥料もあげコンディションを良くしておきます。ご説明の作業は、通常発根しにくい樹種の、あまり養分の詰まっていない箇所を挿している状態と考えたほうが良いかと思います。では発芽の際にどこに養分があるか。見た目から言っても、当然ドングリ部分ですね。



 ドングリ部分はモミジの芽吹きなどで言う双葉(子葉)で、その役割は、植物本体が自身で光合成を行って自立成長できるまでの栄養分を供給することです(樹種によってはモミジのように供給が十分でない分を自ら緑色になって光合成して栄養の供給を続けます)。

 ご説明の作業は軸切りのようで、子葉部分を含めていない点で軸切りとはちょっと違うと思います。仮にやるとしたら、ドングリ(双葉)から出ている直根部分を切る形ではないでしょうか。

 私は、コナラの実生の際は、少しだけ細根を残して、できる限り直根を切り詰めます。曲を活かして、将来の根張とコケ順を考えて切り詰め、どれくらいの大きさの樹に仕立てるかイメージして最初からそれ相応の大きさの鉢に納めます。根は頼りない数でも、ドングリからの養分供給を受けて細根を増やししっかり育ってくれます。また、そちらに養分を使う必要からか、土中の養分を吸い上げる根が少ないからか、地上部の成長は緩くなりがちで、これも小さな樹に仕立てるにはかえって都合が良いです。地上部が抑えられた状態で止まれば低い位置に節は残ります。コナラなら後でその低い節の胴吹きを利用することもできます。

 こういった作業を「芽の伸びに勢いがつく前に」やっておくのが良いです。土の中で根が育ち過ぎると切り詰める量も多くなり、養分を無駄に使います。また、経験的に形も悪くなりがちです。



 コナラでは根を残さず切り詰める形ではやったことがないので結果がどうなのかはわかりませんが、今年の栗の実生のケースで、土の中で発根中に、おそらくまあまあ早い段階で直根の成長点が何らかのダメージを受けた苗が、傷を修復して、そこからたくさんの細根を出しただろう姿を見ています。このことから、たくさんの養分を備蓄している発根後間もない時期なら根を切り詰めていわゆる「軸切り挿し芽」状態にしても多くの発根を得るのではないかと推測します。

15.jpg


 ちなみに、このやり方はイチョウの実生とも共通します。発根時にすぐ直根を切り詰めると、地上部は節の詰まった姿に、地下は側根が育ち、根張りが良くなります。タネは芽本体が振り回されない必要があるので、何かしらの方法で鉢にしっかり固定しておきます。

m_2011_0527_121935-DSCF2557.JPG

 

 その後の仕立て方になりますが、コナラはまず第一として奔放な樹ですし、そこが個性ですから、あまり多くを求めず、つまり無理に針金で作らず、樹姿の流れだけは整え、ある程度あちらの都合に合わせてハサミで仕立てていくのがお勧めです。若木のうちはけっこう胴吹きもしますが、鉢で加減したとしても葉の大きさというのはそれほど小さくは締まりません。こういった性格を前提で仕立てていきます。

DSC_1641_copy_1024x576.jpg

 奔放なコナラを、それでも多少手なずけないと盆栽にはなりませんので、私は芽摘み・剪定などと並行して、枝の強さを調節するのに葉切りして、葉の表面積で枝ごとの差をつけます。


 というわけで、何か参考になれば幸いです。

 次回は、コナラではないのですが、栗の実生を同じテーマの実践としてアップします。


nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。