カラスアゲハの産卵に立ち会う私の物語
午前の水やりの時に、アゲハチョウが柑橘類の葉の裏に卵を産んでいるのを何個も発見しました。初夏から秋まで、毎年、たまにふわりと飛んで来ては卵を産みつけて、何も言わずに去って行きます。去年までは、見つけたらそれをすぐとって、捨てていました。でも、幼虫は、確かに葉っぱをたくさん食べてしまいますが、柑橘は、元気に育っていれば、また新しい芽を吹いて、別の葉を展開させたりもして、決してそれくらいでは枯れたりしません。ただ、見た目がだいぶ痛々しくなるし、やはり葉が少なくなればその分光合成の量が減って弱くなるでしょうし、放ってはおけません。
それでもアゲハチョウはきれいで、街で見かければ、悪い気がしないどころかうれしいくらいで、そんな生き物の卵をやたらに捨てるのも、なんだか気がとがめて、去年から、アゲハチョウ用に柑橘類の実生苗をひとカゴ、2~30株ほど育て始め、卵や幼虫を見つけたらそこに放して好きにさせています。ただ、私もそれほどお人よしではないので、カゴに放した後のことは、羽化できたかどうかなど、知ったことではありません。羽化したヤツも、うちには戻ってきて欲しくないのです。そのたびに卵を産まれるのですから、迷惑です。
私はうちの棚にアゲハが来ると、両手をブンブンと振り回したり、水やり用の噴霧器でシュワーっと霧をまいたりして、追っ払います。2~3度そうすると、アゲハのほうで「こいつはまともじゃない、危険だ」と察して、離れて行きます。友達に見られれば、友達すらも離れていくほどの勢いでそれをやります。
さてさて、今日は水やりの最中、ふわふわとカラスアゲハが飛んで来ました。普段来るのは、ナミアゲハっていうんでしょうか、黄色いアゲハが多かったので、今日は追い払わずにじっと産卵風景を観察させてもらいました。
アゲハチョウは、経験から言ってそのほとんどが、羽ばたきながら葉っぱにとまって、腹を釣り針のように曲げて、葉の裏に卵を産んでいます。そのほうが、雨風もしのげるし、都合がいいのでしょう。しかしこのカラスアゲハは、1個目を柑橘の幹に産みつけました。
おしいけど、残念!と、こぶしを胸の前でにぎりしめて、目をきつく閉じている私がいました。そしてカラスアゲハは2回目のチャレンジに移りました。よく狙いをさだめるのです、カラス婦人!
今度は別の株の、針金の先に産みつけました。
うーん、残念!手元でなしに、腰元がブレたのでしょう。次こそ頼みますよ!
そんな私の思いに反して、カラスアゲハはフワフワと棚の風よけのためのビニールに近付き、
そこに最後の1個を産みつけて、またフワフワと飛び去っていきました。
そんな投げやりな産卵って、ないだろう。ビニールでいいなら、他で産んでくれよ・・・と、なんだか馬鹿にされた気分です。しかしよく考えてみれば、見つけた卵は取って、例の柑橘苗のカゴに移動させている私です、腹を立てる道理がありません。むしろ、見つかりやすいところへ産んでくれて、感謝すべきです。
いやいや、アゲハチョウの産卵らしくないのだから・・アゲハはアゲハらしく・・といってみたところで、じゃあ、自分はまわりの人と同じことをやれてきたか、と・・・。
すみませんでした。私が勝手でありました。どうぞ、ビニールなりアルミなり、好きな所へ産みつけください。あとのことは、私がうまくやっておきます。へぇ、へぇ、どうぞご心配なく。
気の弱い私は、結局アゲハチョウにさえも頭が上がりません。
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