誠鉢と小春鉢の無謀な挑戦
「言」葉が「成」って「誠」なら、「成」がとれたら口から出まかせ。
私の作る鉢、誠鉢のほとんどが、「言(ごんべん)」落款になっています。
以前春嘉さんから、落款はわかりやすくとアドバイスをいただきましたが・・・「言」なんて落款では読めやしません。
そもそも何故こんな落款になったのかというと・・・
小さな鉢を作っていると鉢裏に「誠」と書けるだけのスペースが作れず、「成」をとってしまった、というだけの安易な考えからです。
それでも、ふざけたことばかりやって人生を棒に振ってきた、いい加減な私には丁度良い落款かも知れません。
ところで、初めて鉢を作った際は、落款を入れるなんてとても大袈裟に思えましたし、落款を入れるなんて考えもしませんでした。
しかし一蒼さんへ焼成を依頼した際、後から電話がかかってきて、
「落款が入ってないですよ」
と言われたのです。
「いえいえ、落款なんて・・・そんな、いいですよ」
と私が言うと、
「鉢を売る、売らないは関係なく、とりあえず落款は絶対入れておいた方がいいですよ。「誠」という人はいないから、私が呉須で、「誠」と入れておきますよ?」
というような話がありました。
なので、私が初めて焼いていただいた鉢、十枚程は一蒼さんによって「誠」と書かれています。
今でもたまに、それらの鉢を棚で手にすると、鉢裏を見てしばらくぼんやりしてしまいます。
なにか嬉しいんです。
さて、自分のたのしみのために始めた私の鉢作り。
そういえば私の幼稚園の先生は母への連絡帳に、
「誠君はいつもひとりで絵を描いたり粘土遊びをしてばかりで、もっと友達と遊ぶようになると良いです」
みたいなことを書いていましたっけ。
すまん、高橋先生。
結局こんな大人になってしまいましたよ。
今まで、自分のための鉢作りとして、それでずっと来ましたけれど、去年の秋頃だったでしょうか、同じような木ばかりを作ることで有名な春嘉さんの、そのお弟子さんの小春さんが、初めての売店デビューとして名品展の売店の話があがった際、
「まこっちゃんも一緒に出そう、出すよね!」
といった感じで軽~くとんでもないことを振って来たのでした。
あの娘の恐ろしいところです。
私は小動物の類ですので危険には敏感なのですが、不思議ですね、なんとなくここは流されてしまっても良い所だと感じました。
結局その後、名品展の出店自体がなくなり、立春盆栽大市の話もありましたがそれは私の都合でお断りさせていただき、そんな流れの中、初めて自分の鉢を人に売るということを考えての鉢作りを経験しました。
ちょっと今までの鉢作りにはない緊張感がありました。
そして、多少は数を作らなくてはならないので、自分の作業の過程を見直していったりする中でいろいろ気付くことも。
これをやっていったら自分の鉢作りの幅が広がるかも知れないなと思うところも。
それら諸々が、自分にとって、案外心地良いところがあったりしました。
そして今、小春さんと共に今年の東京支部展小品盆栽フェスティバルへの出店の計画を進めています。
小春さんは春嘉さんの絵付けなしで自分の力を試すようですね。
思い立ったらすぐ動く・・・本当、そこが彼女のすごい(怖い?)ところです。
さあさあ、勢いだけを味方に、一体二人はどこまでやれるのでしょうか?
私達には、知名度も、信頼もありません。
最近、自分の鉢をまわりの方に見ていただいたり、交換会に出したりする中で、鉢に対する信頼というものの大きさを感じました。
しかし・・・この二人、ちょっとおかしな組み合わせです。
彼女はロクロに奮闘して、私はひたすら削り出し。
彼女の師匠は削り出しで、私の先生といえばロクロ。
その点なんだか交差してしまっていますね笑。
とにかく、余計なことは考えずに展示会売店に挑戦です。
お馬鹿な二人がどこまでやれるのか、見てみる価値はありますよ。
おっと、でも、見世物じゃないよ笑。