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東京支部宣言 2011

 今日練馬では38度に達したそうです。隣り合わせの杉並でもかなりいったことでしょう。
 仕事柄、道端で土下座することの多い私ですので、この暑さはこたえます。
 焼けるように熱くなったコンクリートやアスファルトの上に膝をつけて頭を下げると、その熱が私の額を焼くのです。
 流した涙が汗と混じって地面に落ちると、熱をもった地面ですぐに蒸発します。
 落ちては蒸発、落ちては蒸発する涙をただ見つめながら額を地面に押しつけて謝る時、石付きで植えられた樹を思います。
 やつらも大変だなぁ、と。

 さて、先日の納涼展&支部展リハでは、今年ずっと通して講師から教わってきた飾りの基本を、復習を兼ねてお話いただきました。

 それをまとめてみようと思ったのですが、なんだかまとめきれない自分がいます。
 なので、録音しておいた講師の話を一部、(聞き取りにくい所は省いたり補ったりしましたが)そのまま載せておくことにしました。

『 まず、飾りに関してテーマを設ける。俳句でもなんでもテーマを作る。それから9月というのは季節的には秋になっちゃうんですけど、見てる人は夏ですから、どうしても夏の飾りを要求するんですよね。そういうこともありますから。

 それとあと、点数。点数は何点飾るかということを、小ちゃければ少し多めに飾っても良いし、わびしくいくんであれば小ちゃくても三点でいってもいいかなと。で、その時に基本的には偶数は避けることにしてるんですけども、だけど、それだけじゃなくて、いや、俺の考えはこうだよってことがあっても良いと思うんだけどね。奇数っていうのはあくまでも神様、要するに神、仏さんの方から来ていることだから。今はそういうことあんまり考える人いないから。4つは死神だから嫌だって人もいるかも知れないけども、この会では4点でも6点で飾っても文句は言わないんだということにしたいと思うんです。だけど基本的には奇数ということで。これは、日本の文化、要するに中国から来た日本の文化だから。これは、ま、敢えて、曲げない方が良いような気がするけど。いろんな解釈の仕方があるから、あまり難しく考えないで、今回の飾りに関しては、気にしない。ただし、よそ様が見に来るから、その時に、「東京ではこうやって教えてるの?」って言われてしまうんでね、基本的には、これ、あの、神様。

 で、あと高低差。高い所、山のテッペンにあるものと、中腹にあるものと、谷にあるもの、こういう分け方をするために高低差が必要ですから。平でいくとすごく難しいんですよね。流れと大きさだけでいくと逆にすごく難しくなる。

 それから、大きさのバランス。ある程度統一する。でかいのを飾るのか、小さいのを飾るのか。こんな大きなものにこんな小さな添えがあっちゃ、ちょっとおかしい。

 それから主従ですよね。シンがないといけない。そのシンがやっぱり大きくて、松柏。これ、基本なんですけど、松柏じゃなくって、逆にする場合もかまいませんので。国風なんかも、この前皆さんに写真見せましたけど、こんなでっかい雑木に対してこんなちっちゃな真柏の添えがあってって、これは間違いなくそれで良いですから、その辺もあまり気にしないで。

 それで、あの、特に今回若い人がいっぱいいるから、若い人の主張でね、「いや、俺はこうしたいんだ」って、それには、年寄りは文句言わない方がいいんですよ。文句言っちゃいけない。文句言っちゃいけません。前は、前はね、そういう人がいて、こんなのは駄目だって人がいたんですよ。それだともう皆さんついて来ないから。私あの、要するに、今、苔玉の時代ですからね。苔玉を主で飾れるって、そういう教室もある。そういうものも一般になってきていますから。遠慮なく。それで文句言われたら、「いや、ここは新しい会ですから。じいちゃんばあちゃんを卒業しました」って笑。

 あとは展示会には飾がすごく大切で、飾は、まず基本的に高低差を付けるということがありましたけども、色はできるだけ統一したいということですね。材質はちょっと変わってもいいから、できるだけ、黒なら黒、赤なら赤、白木なら白木に統一したほうが良いかと。で、昔はけっこうスノコなんかもありましたけど、スノコも大丈夫ですから。スノコも黒竹使ったのは、真っ黒の紫檀黒檀とも合いますし、それから杉なんか白木を使う時にスノコを選ぶ時は黒いのじゃなくて白いのを使うとか、そういう程度の色の分け方が必要ですけども、できるだけ色はあまりかけ離れてないほうが。俺は違うよってことであれば、それはそれで主張してもらいたいと。

 で、箱で飾るのか、あるいは平飾りにするのか、あるいは高飾も使わないで地板だけということも私はかまわないと思う。その時は今度は非常にバランスが良くないと、それと、流れと、少なくとも日本文化をあれしたんだったら、こういう風にシンメトリー、左右対称にしないでね、ちょっと、少しは日本らしくいこうと。これは最小限、盆栽の日本文化を主張するのであれば、そのほうが良いと思う。

 それから、最初、テーマを考えていきましょうと言ったんだけど、それで、どうしても数が足らない場合、石とか添配とか、そういうものも使って主張していただく。で、その石と添配。添配というのはいろいろなものがありますから。だいたいがあの、宝物とか正月のものが多いのですけども、今のものがあったら今のものでかまいませんので、それはちょっとね、粋に飾りたいんですね。例えばちょっとこうね、隠し気味に飾ってみたり、ようするにこう、粋に飾ると面白い遊びになっていく。

 それからあと、主木がひとつ決まったらあと、「流れ」ですよね。右に流れているのか、左に流れているのか。全部(一方に)流れっ放しでもでもかまいません。で、流れっ放しでちょっと飛んでっちゃうなって思ったら止める。拝み合いにしてるとちょっと格好悪いですよね。片側に流していって、それで私はこういう樹しかないよっていうならそれで良いと思う。で、最後に草かなんかでポンと止めちゃって。そこまでにちょっと間を作ってね。流れと間っていうのはすごく大切だから。よく教室で話するんですけど、もう亡くなったんですけど、アンベさんて人がいらしてね、あの人はすごく面白い人で、真ん中に飾るんですよ。それがこっち向くでしょ、それからこっち向かって、みんなこう(外側に)向いてる。これはわざとこうしてるというわけね。要するに、宇宙へ向かってこうやって広がっていくんだと。だから、これをあの歳でね、よくそういう発想をしたなと、私は感心するぐらいの。だけど、その真似はできませんでしたね。まだそれにはちょっと時期が早いと。「お前、馬鹿なことやってるんじゃないよ」と言われてしまうから。だけど、そのくらいのあれはあった方がいいと思うんですね。特に、若い人、これから期待をしておりますので。いろんなこと考えてください。 』

 この作業のために録音されたものを聞いていて、私は胸がいっぱいになりました。

 この会は昔からある盆栽会で、支部展とはいえあちらこちらから愛好家さん、業者さんも訪れますが、とにかく新人に、まだ若い樹でも安い鉢ででも、入って1年2年でも飾ってもらい、その楽しみを味わってもらいたいという気持ちが伝わってきました。
 昔は相当厳しい方もいらっしゃって、こんなの十年早い、などと言われることもよくあったそうです。
 でも、盆栽に若いものは「こんなの盆栽じゃない」と言われてしまう、それは仕方ないことだが、支部展は今年1年やったことの成果の発表会で良いのではないか、とのことです。
 そのほうが若い人もついて来れる、と。

 『 昔の殻を破らないと発展がないと思うんですわ。お前たち何をやってたんだ、ということになるじゃないですか。(盆栽展示の源となる価値観を作った)室町時代の人たちは何もなかったところからやってきたのですから。それを、あの先生がやったからこれが本道だってことになってきてるわけね。だけど、室町の封建時代からずっと同じっておかしいでしょ。だから、殻を破らないと。もう、絵や彫刻で既にやってますよね。だから盆栽もそれなりに勇気をもってやった方がいい。それのが若い人もついて来る。だけど、基本を覚えておいてやるのと、そうでないのは違いますから』

 『 ひとつの展示で見透かされるんですよね。あなたの精神状態、教育状態を。それを批判されるのが怖いから飾れない。それがあるんです。でもそれをね、避けなきゃいけないと思ってるんです。私はこれくらいの教育しか受けてませんでもいいし、知っててこうやりましたでもいいんですよ。そのために飾れないっていう人いっぱいいるでしょ。それやってったら1年や2年じゃ飾れないよね。だから、1年2年で飾りましょう!』
 
 さてさて、そんな中で、自分がよくても会や講師の名に泥を塗ってしまわないかと、
 ある先輩の、
 「プレッシャーかかるなぁ、T屋さんに対して...笑」
 なんてつぶやきに対しても講師、
 『プレッシャーは、だから、もうやめちゃって、新しい発想で!「私はまだ1年しか経ってないから、これでいいです」俺、これはすごく立派だと思うんだよね。その勇気がね』
 とのこと。

 講師は本気です笑。
  
 なんだかダラダラと写真もなく文字を並べてしまいました。
 ぼんやり後ろめたさみたいなものも感じています。
 が、古い盆栽会だって変わろうとしている、ということを知ってもらうのにも良いし、また、私と同じ経験の浅い方々にとっても、何かしらの意味があるかも知れないと思いましたので、勢いで公開してしまいましょう。
 なになに、私みたいに勝手なことする人間がひとりくらいいても良いじゃないですか。

 東京支部。
 これからがますます楽しみになりました。
 むっちょがんばりますよ。


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